彼の考えを危うい、非常識だと蔑み、否定する人間は多いだろう。
だけど同時に、多くの人間は彼のような男を本心では羨ましいと思うはず。
倫理、道徳、常識―――
この世に溢れる、様々な自分を縛る言葉を彼は
まるで硝子を叩き割るかのように、簡単にやってのける。
硝子の破片はまるでスローモーションのように、ゆっくりと流れるように彼の足元に落ち、
そのひと欠片を私が拾った。
その欠片はキラキラしていて、透き通るように澄んだ色をしていた。
宙にかざしてみると、それはダイヤモンドのようにキラキラと輝いている。
蒼介にもらったリングと―――同じ輝きだ。
だけど偽りの輝き。
しかも、破片の先は鋭く妖しい光りを湛えている。
その欠片で怪我をすると分かりきっていても―――
私は拾わずにはいられない。



