「結婚してください」
銀座の色めくネオンの中、青白い顔を真っ赤に染めて、彼は懸命に私に手を差し伸べていたっけ。
お付き合いの申し込みも、結婚までに行き着く手順もすっ飛ばして、いきなり結婚ってことにびっくりした。
そう言うことに奥手だって、何となく気付いてはいたけど……
あまりにも真剣で、必死なその表情に。私の心がふっと緩んだ。
「私でよければ」
それが旦那とのなれそめ。
私だってだてに30年近く生きてきたわけじゃない。
それなりに恋愛だってしてきた。
蒼介とは、燃えるような激しい恋をしたわけじゃないけれど
素朴で、純粋。ひたすらにまっすぐ向けられる愛情に
恋心というより、安心したの。
ねえ、あなたは知ってたのかしら?
私の愛用しているAddictという香水の香料に
月下美人が使われていることを―――
Addict
それは中毒。



