最初の一杯にビールを注文した。
つきだしに、かぶの餡かけの煮物が出される。
綺麗な白い色をしたかぶの上にとろりとした餡がかけられていて、その上にゆずの皮がひとかけら乗せられている。
箸で切ってひとかけらを口に運ぶと、思いのほかおいしかった。
「おいしい!」
素直に喜ぶとカウンターの向こうでビールを注いでいる店主は嬉しそうに顔をほころばせ、隣の啓人もちょっと笑った。
「だろ?あんまり客もいねぇし、穴場なんだよね」
なるほど。啓人が贔屓にしている理由が分かった気がする。
彼はメニューを見ずに、からすみと大根刺し、メバルの煮付け、にんじんサラダに、本日の刺し盛りを頼んだ。
「紫利さん嫌いなものある?」
「頼んだあとに聞かないでよ。ないけれどね」
「そうだね。何かここに来ると自分のペースになっちまうんだよな」
おしぼりで顔を拭いながら、啓人が笑う。
「その動作おっさんくさいわよ?あんた若いんだし、もっとスマートじゃなかった?」
「本当の俺はこんなんだぜ?いつもはかっこつけてるの」
くだけた様子で笑うと、実年齢の三歳以上も若く見える。
子供なのかおっさんなのか……
冷たかったり、優しかったり。
色んな顔を持ってる彼の
本当の素顔が知りたくなった。



