割と大きな道で信号待ちをしているとき、彼は急に私を引き寄せた。
え―――?
と思う暇もなく、不意打ちにキスされる。
びっくりして目を閉じるのも忘れたぐらい。
まだ早い時間だ。信号待ちしていた通行人も多い。
高校生ぐらいの女の子たちが「キャ~♪」と小さく声をあげたし、私たちの隣で信号待ちをしていたカップルは呆気にとられたようにぽかんとしている。
「今時の若いもんは」と言いながらも、にやにや笑いを浮かべているおじさんたち。
恥ずかしくて、顔から火が出そうだった。
「ちょっと!こんなところで何するのよっ」
軽く睨み上げたけれど、啓人はしれっとしている。
ちょっと舌を出して悪戯っぽく笑った。
「だって~今日の紫利さん、すっげー色っぽいんだもん♪そらキスしたくなるワ。店に行くよりホテルへ連れ込みたい気分だぜ」
顎に手を当てながら、彼は信号の向こう側に立ち並ぶビルを眺めた。
「あんたはいつもそうでしょ?」
呆れたように吐息をつくと、
「さすがにいつもじゃねぇよ。そんなに若くないし」
若くないって……あんたが言う?
「ま、紫利さんとだったらいつでも行きたいけど?」
啓人は意地悪そうに薄く笑いを浮かべて、私を覗き込んできた。
私も同じように笑い返した。
「いけない子ね」
ちょっと微笑むと、彼はくすぐったそうに笑った。
そのつま先を思い切りブーツのヒールで踏みつけてやった。



