四時半を過ぎると、萌羽は店に出勤していった。
「パーティーの件、いい返事期待してるわよ~。デートがんばってね♪」と言い残して。
私は彼女に苦笑して手を振った。
一ヵ月後のパーティーより、今、私は数時間後の啓人とのデートのことで頭がいっぱい。
まるで恋を知ったばかりの少女のように、胸を高鳴らせ、心地よい緊張を覚えていた。
―――――
―――
約束の五分前に五反田駅に到着した。
だけど約束の時間になっても啓人は現れなかった。
もしかしてすっぽかされた??
いやな考えが横行して改札の近くの柱でもたれ掛かり、そわそわと改札口を見る。
だけど、さっきから道行く男の視線を感じて、私は別の意味で落ち着かなかった。
私
変かしら。
手鏡を出して顔をチェックする。
今日はいつも結い上げている髪を、左でゆるく一つで結んでいる。
口紅もいつもの赤いものから、ベージュピンクに。
グロスものせてきたけれど、若作りしすぎ??
なんて思っていると、若い二人組みの男が声をかけてきた。
「おねーさん♪」
一瞬、啓人だと思って顔を上げたけれど、彼ではなかった。
啓人よりも若い…きっと大学生ぐらいだろう。



