「玉の輿ってやつ?やめておきなさいな。どうせジュニアでしょ?大した男じゃないわよ」
「それがぁ、噂だと超イケメンだとか!」
イケメン……ねぇ。
イケメンってのは啓人みたいな男を言うものよ?
どんな男だって彼の前に立てば、自分がかすんで見えるでしょうね。
私はちょっとだけ笑みを漏らした。
「噂は噂でしょ?顔は良くても無能なジュニアだったら会社を潰しちゃうかもよ?」
「それはじっくり会って話してから見極めるわよぉ」
「歳はいくつなのよ。その息子は」
「あら♪月香姉さんだって食いついてるじゃな~い。教授夫人の座から乗り換える気?はっきりとした年齢は知らないけれど、30前ってことは確か」萌羽が悪戯っぽく笑う。
萌羽は女の私から見てもキュートだけど、こうやって笑うとちょっと小悪魔的な色香が見えて、とっても色っぽい。
「そんなつもりは毛頭ないわ。ただあの素敵な会長のご子息ってどんな男か興味があるだけよ」
でも…30前かぁ……
私はちらりとリビングボードの上の小瓶に視線をやった。
私は
蒼介を裏切る気はない。
だけど、今こうして萌羽を前にちょっと浮き足立っている自分も
また本当の自分。
まるではじめてのデートのときのように、あれこれ悩んで、めかしこんでいる自分が滑稽でもあり、
そんな自分がまだ女であることを嬉しく思う。
今日の私は矛盾だらけ。



