デート……?
またも心臓が波打って、私は顔を上げた。
ルームミラーの中で運転手とばっちり視線が合ってしまった。
この運転手は何を想像しているのかしらね。
恋人との逢瀬の帰り道?
それとも道ならぬ大人の情事の果ての帰り道?
もっとひどい…若い男を買って、一夜の過ちに後悔して慌てて帰りを急ぐ女?
残念だけど、どれも違うわね。
私はそ知らぬ顔で運転手を見据えた。
彼は慌てて視線を外す。
「いいわよ。連れてってちょうだい。ハンカチもそのときに返してね」
『オッケー♪んじゃ、次の金曜日。迎えに行く。どこまで行けばいい?』
「迎えはいいわ。待ち合わせましょ?」
『そ?んじゃ、五反田の駅でどうよ?』
「五反田?いいわよ」
『じゃ、21時待ち合わせで♪』
ご機嫌に返事を返してきたのを聞いて、私は電話を切ろうとした。
電話を耳から遠ざけると、
『待って!』と彼の声が追いかけてきた。