「陰険でさぁ。俺のこと目の仇にしてるの。目の上のたんこぶって言うのかな?年増OLの苛めみたいなことしてくるんだぜ?」
そう言いながら彼はワイシャツのボタンを外す。
「ふぅん。あんたも色々苦労してるのね」
「そ。苛められて毎日枕を涙で濡らしてるのよ。俺」
「あんたが苛められて泣くタマ?その100倍でやり返しそうじゃない」
呆れて言うと、彼は背中を向いたままくっくっと低く笑った。
「紫利さん、俺のことよく分かってンじゃん」
「俺、女に苛められるのは好きだけど、男に苛められる趣味はねぇの」
そう言って彼はワイシャツを肩から滑らせる。
無駄な脂肪のついていない綺麗な筋肉の肩と、背中の肩甲骨が綺麗に浮き上がっている。
天使の羽と呼ばれるその部分に、本物の羽が浮き上がっているように見える綺麗な背中だった。
蒼介とは違う、若くて男らしい……綺麗な背中。
って…
「ちょっと!ここで脱がないでよっ!」
私は枕を掴んで彼に投げつけると、彼は後ろ向きだと言うのにそれをあっさり避けた。
「何だよ~。一つの布団で寝た仲じゃーん」と首を捻って彼が口を尖らせる。
「寝ただけでしょ!悪いけど男の裸を見て興奮する趣味はないの!」
私は怒鳴ってやった。
「分かったよ。向こう行けばいいんだろ」
むくれながら彼が立ち上がる。
私はしっし、と手を振った。
嘘。
本当はその綺麗な背中に釘付けだった。
はじめて見る完璧に整った背中に欲情さえした。
彼は裸足のままバスルームへ歩いていき、その途中で足を止めた。
くるりと振り返ると、天使の笑顔を浮かべる。
「一緒に入る?♪」



