「ひどい寝顔だったわよ?白目むいて涎垂らしてたわ」
彼の一言に一喜一憂している私がいやで、つい嘘をついた。
「ぇえ!白目、涎ぇ??」
「色男も台無しね」
鼻で笑い飛ばしてやったけれど、彼はちっともへこたれない。
「研究しなきゃな。って言っても寝てるときまではさすがにわかんねぇし…」と真剣。
嘘よ。
天使のような寝顔だったわ。死人のように身動き一つなかったしね。
そんなことを思っていると、
TRRRR…
彼の携帯が鳴った。
のろのろと彼がベッドの枕元に放り出された携帯に手を伸ばし、サブディスプレイを見て顔をしかめた。
「ゲ!最悪」
彼は携帯を手にして、少し悩んでいるようだった。その間も携帯のコール音はなり続ける。
「どうせ女からでしょ?早く出たら?」
女、ってのは分かりきっている。その事実にどうしようもなく苛々して、私は嫌みったらしく顔を逸らした。
「まぁかろうじて女ってとこだな。八割がた男だ」
と、よく分からないことを言って、覚悟を決めたのか、彼は携帯の通話ボタンを押した。
こそこそとその場を離れるわけでもない。怪しい行動をとるわけでもない。
平然としたその態度に、私の方がちょっと驚いた。



