大きな欠伸をしながら、彼も起き上がってくる。
「目、覚めちまった。紫利さんが怒るから」
「私のせいにしないでよ。あんたが変なこと言うから」
「変なこと……って何よ?」
彼はまだぼんやりと私の方を見て頭を掻いている。
昨日までしっかりセットしてあった髪が無造作に乱れていた。
そこがまた色っぽい。
ガキのくせして―――
私は折りたたんだ帯を拾い上げた。
「昨日は久々にあんなに酔っ払った~」
のんびり言って彼はベッドの上に胡坐をかいた。
「一体何杯飲んだのかしらね。私たち」
「さぁ。でもそーとーだと思うぜ?何せ俺が誰かの前で寝るなんて滅多なことがない限りねぇからな」
帯を腰に巻きつけていた私はその手を休めた。
「あら。意外に神経質?」
「そういうのかな。人の気配がしたら眠れねぇの。だからこのホテルもよく利用するけど泊まった事はあんまりねぇな」
「そう……だったの?」
「そ。だから俺の寝顔を見た女は紫利さんが初めてかも♪結構貴重な体験よ?」
あの可愛い寝顔を見れたのは…いやいや…一瞬死んでるのかと思ってびくびくしたわよ。
でも、そんな寝顔を見たのは私が初めて―――?
ドキリとまたも胸が高鳴り、私は慌てて頭を振った。
昨日の酔いから覚めていないのか、くらくらする。
それはお酒のせいなのか―――
それとも彼のせいなのか。
私には分からなかった。



