って言うか、本当に何もなかったの?―――よね……
こんなベッドで男女一緒に寝てるわけだし、何もなかったって方が不思議だ。
私は今更ながら不安になった。
「ね、啓人」
私は向こうを向いて眠りに入ろうとしている啓人を布団の上からゆさゆさ揺すった。
「……なに?」
不機嫌そうな声だけが返って来る。
「一つ確認したいの。私たち…その……昨日は…」
言いよどんでいると、啓人がゆっくりと寝返りを打ち振り返った。目だけを上げて私を見上げてくる。
「何もねぇよ。酔いつぶれてる女をどーこーしようって程、困ってねぇしな」
口調にいつもの生意気さが戻っていた。
「あ、そ」
ぞんざいに返事を返して、少しでも疑った私がバカだったと恥ずかしさを感じて私はベッドを降りようとした。
その腕を彼が掴む。
「何かあってほしかった?」意地悪そうに口元を歪めているけれど、寝起きの無防備な彼が言うとすごくセクシーで…
私の心臓が大きく跳ね上がる。
「そ!そんなわけないでしょ!!離してよ!」
乱暴に彼の手を振り払うと、私は今度こそベッドから降り立った。
びっくりした。
彼の言葉が図星だったから。
そう―――私は歳若い彼の腕に抱かれても……
ううん。
抱かれたいと―――思っていた。



