ミモザを飲み切って小さく吐息をつくと、前に向き直ってバーテンのユウくんに笑いかけた。
「フラれちゃったわ」
ユウくんは悲しそうにちょっと笑っただけで
無言でハンカチを差し出してくれた。
白いハンカチでハンカチの隅に刺繍がしてある。それはいつだったか私が啓人に貸したハンカチと似ていた。
刺繍されたイニシャルも『Y・K』だったし。
偶然だけれど―――
偶然―――よね……
私は目だけを上げてユウくんの顔を窺うと彼は意味深そうにちょっと笑っただけだった。
何でもお見通しなのね。
そうよ
彼とは……啓人とはここではじまった―――
ここでハンカチを貸したことからはじまった。
そして終わるのもここで。
今、私ははじまったばかりのハンカチを握りしめている。
それが何だか
嬉しい。
「ありがと、ユウくん」
でももうこの場所にはきっと
来ない。



