「さようなら、紫利さん。あなたはいい女だったよ」
「さよなら。あなたは……去り際までワルい男」
私たちは最後の挨拶を交わした。
啓人は言葉も少な目に立ち去る。
私はそのスラリと高い背から顔を背けた。
いつまでも名残惜しそうに見送るのはバカな女がすること。
私は
バカな女になりたくなかった。
泣いて縋って「捨てないで」と喚く女になりたくなかった。
短い間だったけれど、彼との想い出はたくさん。
それを全部飲み込んで消化するように私はカクテルグラスをひたすらに傾けた。
さよなら
愛しい人
さよなら
愛した人―――
さよなら。



