それは時に辛いもの。泣きたくなるぐらい悲しくもなる。
死にたくなるときもあるかもしれない。
けれどそれ以上に楽しくて、それ以上に美しいものなのだ―――
それを知ってほしい。
ここに来て二杯目にミモザを注文すると
「諦めるしかないんだよ……」
彼は唐突に言い出した。
「どうして?既婚者なの?」
私が言う言葉ではないけど。
「…………いや」
彼はたっぷりの間を含めてそう言い、またも俯いた。
はじめて恋をした…いわば恋愛ビギナーの彼が壁にぶち当たり、尻込みをしている姿にちょっとの苛立ちを抱いた。
それは何の種類か分からないけれど不快に私の中をじわりじわりと浸透してくる。
けれど啓人が俯いていたのは数秒で、やがて彼は喋り出した。
相手は会社の例の部下で、仕事はできるけど冷たい女で……
出会ってすぐに彼は彼女のことが気になり(顔だけ、最低ね)、さらには同期も巻き込んでどちらが彼女を早く堕とせるか賭けをして競ったようだ。
男ってホントどうしようもない生き物ね。そんなくだらないゲームをするとか。
まぁ今は私の細かい感情よりも啓人の話ね。
最初は自分より仕事のできる彼女に少し嫉妬する部分もあったけれど、やがてそれを認めて良きパートナーになろうと努めたようだ。
しかし、どうやら啓人はその人に仕事のパートナー以上の感情を抱き始めて。
けれど彼女は啓人に見向きもせず―――
何とか誘って一夜を共にしたけれど
彼女の出した条件って言うのが『あたしを好きにならないでください』と言うことらしい。
まぁ要約すればこんな感じね。
まだまだ話したいことがたくさんありそうだったけれど
だらだらと人の恋路の話をされてもねぇ。
と言うことが分かってるのかしらね。
そもそも私たちは互いの恋について語り合うほど親密な〝友達”じゃないし。
でも
何だかつまらないわ。
それは
文字通り
「つまらない男」に成り下がった啓人にがっかりしただけ。
苛立ちの原因が分かった。



