「あらぁ、図星?ついでに言うと、その女はこの間言ってたあなたの部下ね」
美人の、と付け加えると啓人は否定する意味でかギムレットをこくりと飲み込んだ。
素直じゃないんだから。
そんな風に反抗されると、ますますいじめたくなっちゃうわ。
くすっ
喉の奥で笑うと
「はい。その通りでございます」
と、今度はあっさり認めた。
どうやら隠す気はなさそうね。
ゲームの終わりが近づいてきている。そんな実感はあった。
楽しみつつも、終わりを惜しんでいる。
複雑な気持ちを押し隠すかのように私はわざとゆっくりと口を開いた。
「その女に、恋をした?」
探るような試すような視線を向けると
「恋……ねぇ……」
彼は短くなったタバコを灰皿に押し付け、額に手を置いた。
その横顔に益々影が宿って啓人の横顔をどんよりと暗く見せた。
その横顔はこの前、復縁を迫ってきた蒼介のそれと良く似ていて―――
こんなときも思い出すのは蒼介のことだ、と改めて実感すると自分の犯した罪がなんと重いことだと
改めて思い知らされた。
「もう諦めたような顔してる」
私は自分の考えを変えるようにわざと冗談ぽく口をとがらせてみた。
今のは半分本当のことで半分嘘ね。
何よ、私にも見せたことのない顔でその女を想って―――
いつだって自信に満ち溢れていたのに、今は少しの自信の欠片もないような。
悔しいわね。
なんて少しだけ嫉妬もした。
そんな顔、私には見せてくれなかった。
ほんの少しの直感。
啓人が好きになったのは、きっと領事館の前で会ったあの若い彼女―――名も知らない白いコートが似合うような
女だ。
何故だかそんな気がした。
そうであってほしい―――と、私の願いかもしれない。
彼が好きになる女は、若く美しく聡明で、気品がある女であってほしい。
半音上にも半音下にもなる私なんかじゃなく、それはきちんと発音される人であってほしい
と。
願わくば
その彼女のことを幸せにして、その彼女と幸せになって
啓人には本当の恋や愛を
知ってほしい。



