「仕事?」
私がその疲れがどこから来ているのか聞くと同時、逆三角形のカクテルグラスが啓人の前に置かれた。
乳白色の液体がゆらりと揺れ、その表面に啓人の疲れ切った表情がふわりと浮かぶ。
「仕事じゃないよ」
彼は疲れた表情のままグラスのヘッド部分を持って答えた。
「じゃぁプライベートで?何かあった?」
さらに聞くと
「んー……まぁ…」
と曖昧な返事が返ってくる。
思えばこんな風に質問をするのもはじめてだった。気にしてない素振りをして背伸びをしていた自分に
さよなら。
それにしても
まぁまぁ。何なのかしらね。この坊やは、
いつもいつも手放そうとしたらこちらにその気を失せさせるような新しい一面を見せるんだから。
ときに強引で
ときに優しく
でも今日は少しだけやつれたその横顔が―――
何故だかものすごく色っぽく映った。
「分かった、女でしょう?」
私が聞くと
「え゛??」
啓人は私が聞いたことのないような頓狂な声で問い返してきて、その狼狽っぷりに私は思わず笑った。
ホントに―――
素直なんだから、この坊やは。
恋を知ったばかりの男の子全開のそんな表情をされると
別れが早まったと気づいても
ちょっと意地悪したくなっちゃうじゃない。



