待ってないわ。ユウくん。
ううん、最初は待っていたのかもね―――
でも待つことに
疲れちゃったの。
「啓人!」
私も手を挙げると
「久しぶり。待った?」
と当たり前かのように―――気軽に席を詰めてくる。
思えば―――いつだって啓人は鮮やか過ぎるぐらいスマートに私の内側に入り込んできた。
少しの躊躇もなく。その行動は自信に満ち溢れていた。
そういうあなた―――好きだったわ。
「待ち過ぎておばあちゃんになっちゃうところだったわ」
思わず嫌味を返すと
「ごめん、ギムレット」
小さくユウくんにドリンクを頼むとせっかちにタバコに火をつけた。
その、いつになく余裕のない横顔は少しだけ影が宿っていて
「啓人、疲れてる?」
私は何となく切り出した。
彼の頬をそっと撫でるとひやりと冷たい肌の感触がした。これが最後の触れ合いかと思えば
何となく寂しいものが私の中に浮かび上がった。
けれど彼の表情に少しの変化も見られなかった。
彼もまた
私と同じ決意を抱いていることに
気づいた。



