「どうしても……?」
蒼介が眉間に皺を寄せ片手で額を覆いながら尋ねてくる。
こめかみに血管が浮き出ていて、それが彼の苦悩の表れだと気づいた。
「どうしてもよ」
もう一度言うと
「どうして………?」
今度は理由についての問いかけだった。
理由を話せずに口をつぐんでいると
蒼介は額に血管を浮かび上がらせたまま
「あの男とまだ続いているのか?
だからか」
聞いたことのないような低い声で唸るように一言呟いた。
車のキーが渇いた音を立てて床に落ちる。
私はそのキーを拾うことさえできずただ頭を抱えて蹲っている蒼介を見ろすしかできなかった。
何か―――
何か言わなきゃ……
「蒼ちゃん……ちが……」
何かを言い始めると、蒼介が私の言葉にかぶせた。
「僕はあのときの自分の言葉に後悔している。
“その彼とどうしても一緒に居たいのなら、僕と離婚してその彼と付き合ってもいいと思う”
あの言葉さ
心底
後悔している」
蒼介はとうとう両手で顔を覆って、腰を折ると床に肘をついた。



