私は食材を冷蔵庫に仕舞い入れると、なんでもない素振りで髪をまとめ、バッグを引き寄せて車のキーを指で回した。
「私、まだ飲んでないから送って行こうか?大学でも自宅でもどちらでも」
「大学にも自宅にも送らなくていいよ……
君を……
僕は
連れ戻しにきたんだ。
紫利ちゃん、一緒に帰ってほしい」
水の入ったグラスをテーブルに置いて蒼介が小さな声で呟いた。
消え入りそうな声。語尾が僅かに震えていた。
「連れ戻しに……?えー…と」
急なことで私も返事を考えてなかった。
前だったらもっとうまく切り返せたのに、今はその感覚が鈍っている。
「それは無理よ」
その言葉が出るまでゆうに数分掛かった。



