「悪い男か。そう言われるの、悪くないね」
啓人は私の頭を撫でると、さらに強引に啓人の胸へ抱く。
「悪い男って言うのは、女にとって素敵な男を意味してるのよ。
啓人は素敵よ」
あなたは素敵よ啓人。
でもやっぱり同じだけワルい男で、
そしてイイ男。
何だか矛盾しているけど
シーソーに乗せたらきっとうまくバランスを取るに違いない。
でも私の気持ちを乗せたらきっとそのシーソーは
壊れる。
だからじゃないけれど、そのシーソーのバランスを私は遠くで見ているだけで充分。
控えめな女じゃない。
ただ、色々諦めがついたしケリがついた。
悲しいことだとは思わない。
私たち女は、そうやって経験をして実感をして歳を重ねていく生き物だから。
「女はね、地位も金もあると男なんて必要なくなるのよ。だって一人で生きていけるもの。
そりゃ寂しいときもあるでしょうけど、その時々に適当に遊ぶのが性に合ってると思うの」
私には地位と言うものはないけれど、女一人食べていける分の貯えはある。
もしかしたら、誰か一人の伴侶になるよりこうやって時々愛のないセックスをするのが性に合ってるのかもしれない。
そうだとしたら、私は生まれ付いての淫乱なのか。
「紫利さんもそうなの?」
「さぁ、どうかしらね?啓人は私が欲しいものをくれるけど、
私が本当に望んでいることを知らない。
でも知らない方が
幸せよ」
私自身……本当は何を望んでいるのか分からない。
いいえ本当は気付いている。
啓人の胸元に乗せた左手薬指には
未だ蒼介のくれた指輪が光っている。
離婚届を書いて置いてきたけれど、これだけは返す気になれなかった。
啓人の腕に抱かれて眠りながら
私は蒼介の夢を見ていた。



