Addict -中毒-




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それから一ヶ月経った。


蒼介から離婚届に関して何の連絡もなかった。


さすがに一ヶ月も経っているし、家に帰ってないと言う事もないだろう。


蒼介が何を考えているのか分からなかったが、きっと黙って出て行った私に腹を立てて一刻でも早く忘れたいに違いない。


それともあの人のことだからこの状態に戸惑って、どうすればいいのか身動きが取れないだけかもしれない。




折を見て―――義母にご挨拶に行こう。


水を掛けられるかもしれない。塩を投げられるかもしれない。


でも最後はちゃんと





「申し訳ございませんでした」





たった一言、この口からきちんと謝罪したい。


そうすることで自分の中の罪が消えるかもしれない、なんて浅はかな考えも過ぎったが





蒼介を裏切った罪は一生消えないのだ。






―――「悪いわね、あなたのところに厄介になって。


すぐに新しい家を見つけるつもりだったんだけどね、なかなかいい物件がなくて」


私は藤枝家を出て、今は萌羽のマンションにご厄介になっている。


「私は……いいのよ」


萌羽がいつもより念入りにスキンケアをして、顔にパックを張り付かせていたが、そのパックをゆっくりとはがしながら


「私が言うのもなんだけど……姉さん、本当に離婚しちゃっていいの?」


「いいのよ。決めたことなんだから。


それより今日お休みでしょう?これからお出かけ?」


時間は夜の19時を差している。


私は化粧もしてなかったしシャツにジーンズと言うラフな格好で、焼酎のロックをグラスに口をつけて床に胡坐を掻いた。


「うーん…これあんまりおいしくないわね」


顔をしかめると、


「安いお酒だもの」と萌羽は苦笑。


いつもなら少しちょうだい、と言って私が何も答えずにグラスを奪っていくのに、今萌羽はパックをはがすのに夢中だ。


女同士だし、萌羽には気を許しているから随分気楽なものだ。


蒼介のときも、啓人のときも―――私はどこか無理していたのかもしれない。


常にぴんと背筋を伸ばし、姿勢を崩さない。


意識していたわけじゃないけれど、何となく身についていたのね。






完璧な私じゃないと、愛してもらえない気がしていた。




二人はそんな完璧な女を求めていたわけじゃないだろうに。





息苦しくしていたのは私自身だったのだ。


全てを失ってから、そのことにはじめて気付いた。