私は震える手で新しいキャンドルに何とか火を燈すと、真正面から蒼介を見つめた。





「蒼介―――……



どうして私を責めないの?」






蒼介がゆっくりと顔を上げて、戸惑ったように視線を揺らした。


だけどすぐにまた顔を逸らす。






「どうして、離婚だ!って怒らないのよ!!どうして―――……


私を怒鳴って、罵ればいいじゃない!


こんなことになって、どうして選択権が私にあるのよ!



どうして―――…








こんなときまで





私を見てくれないの」





怒りの感情でも良かった。



怒って、恨んで―――顔も見たくないと睨まれても良かった。




でも彼は、こんなときまで私の方を見ようとはしなかった。


ただ困ったように視線をテーブルに彷徨わせている。





「選択権は君にある。


僕は最初からそうするつもりだった。君に選んでもらうつもりだったんだ。


君の気持ちを僕がどうこうできる立場でもない」





どうこうできる立場でもない―――?



あなたは私の夫なのよ。私はあなたを裏切った。



『悪いのはお前だ!』



たった一言じゃない。



「だから今日、この場を設けた。このことを切り出そうと思ったが、君の告白の方が早かった」



蒼介は両手を組むと額に置いて、大きなため息を吐いた。


細い指先の下で眉間が深い皺を作っている。






「選ぶのは





君だ」