Addict -中毒-



「「メリークリスマス」」


グラスを合わせて私たちは乾杯し合った。


蒼介はテーブルに並んだ食事を眺めてしきりにまばたきを繰り返している。


「これ全部創ったの?凄いね」


「クリスマスだしね」


奮発して創ったのは余計なことを考えたくなかったから。


啓人のこと…と言うよりも今回は目の前に居る蒼介と、萌羽のことが多くを占めていた。


蒼介は最初はぎこちなかったものの、一口口に含んだだけのシャンパンにいつになく饒舌だった。


会えなかった数日間の、研究室での話しを一生懸命になって話し聞かせてくれる。


思えば随分久しぶりのことだ。こうやって二人して向かい合い彼の子供のような無邪気で熱心な話しをゆっくり聞くのは。





懐かしい―――……





私と蒼介との距離は彼がマダムバタフライに通ってくれていたときの方がずっと近かった気がする。


結婚したら物理的にも近くなったはずの距離を―――いつの間にか遠く感じていた。




私は彼の話しに相槌を打ち、ときには質問を交え、ときには驚いたりしてみせて


気になっていたぎくしゃく感は心配に終わった。


啓人と過ごす、あの心からの楽しさよりも、ほんわかと心温まる、それは穏やかで心地よいものだった。


七面鳥も思った以上においしくできたし、長いキャンドルが燈した火で小さくなっていた頃、


蒼介が改まって表情を引き締めた。


「紫利ちゃんにクリスマスプレゼント」


いつになく改まって姿勢を正していた蒼介に、一体何を言い出されるのかちょっと不安になったから、


思わぬ言葉に拍子抜けした。


「私もあるの。蒼ちゃんに」


私も用意していたプレゼントを蒼介に手渡すと、彼はまたも強引に笑顔を浮かべてそれを受け取ってくれた。


また―――……


一体、何だと言うのだろうか…