「俺の分を少し分けてやるよ」
啓人がにっと笑ってネットから出てくると、メダルを彼らの手に握らせた。
「え…でも……」
少年たちが驚いて目をぱちぱちさせている。さすがに悪いと思っているのか、戸惑っていたが、
「大人の厚意は素直に受け取っておくものだぞ。ぼーず」啓人が少年たちの短く刈られた頭をぐしゃぐしゃ乱暴に撫でると、少年たちはくすぐったそうに笑った。
「いてっ。いてーよ。でもありがとう、おじさん」
!
あたしは思わず目を開いた。
啓人の手も止まった。
「お、おじさん…だぁ!俺はまだおじさんって歳じゃねぇ!」
啓人が喚くと唐突に笑えてきた。私から見たら啓人はまだまだ子供のようだけれど、彼らのように若い子たちから見たら啓人も“おじさん”なのね。
「啓人、大人げないわよ♪」
楽しそうに言ってやると、
「ありがとう。おねーさん♪」少年たちはにこやかに私を見てぺこりと頭を下げてきた。
随分ユーモアのある子たちだ。面白い。まるで啓人二世。大きくなったらこの子たちも啓人のようになるのかしらね。
似てほしくはないけれど。
「くっ。こいつらガキのくせして、レディーの扱いを知ってやがる」
啓人が悔しそうに歯軋りして、それでも
「励めよ、ぼーず」すぐに笑顔を浮かべて、また頭をがしがしと撫でる。
「いってぇよ、おじさん」
そう言いながらも、少年たちは楽しそうだった。
啓人も楽しそう。
私も―――楽しい。



