この場所から上野までは車で15分ほど、と言うところか。
彼の車で移動することになった。
ほんの少しのドライブだ。
思えば私は彼の車に乗るのが初めてだった。
車内はこざっぱりとしていて、オーディオに繋がれたiPodから緩やかなジャズが流れていた。
聞いたことのある曲だった。
「……茶色の小瓶」
「そ。良く分かったね。グレンミラー、好き?」
「そこまで詳しくはないけど、有名じゃない」
「そうだよな♪紫利さんの部屋にあっただろ?茶色い瓶に漬けた月下美人。あれ思い出してさ~」
………
私は思わず口を噤んだ。
嬉しくないわけない。
女が好きなことをさりげなく分かってる。
嫌味じゃない程度に、だけど確実に女心を掴む。
令和の光源氏ね、啓人は。



