「今に見てなさい。あの化けの皮を剥いでやるから。
ああ、その前に。遺言書を作成しなけりゃね。あの嫁にはビタ一文と残す気はないけれど、蒼介にはたくさん残してやりたいしねぇ。
だけど蒼介に残すとなると、自動的にあの嫁にいきわたるだろ?」
「お義母さん、遺言書なんてまだ早いわよ。でもそうね…もし財産を残すとなれば土地や建物なんかにしたらどうです?蒼介さん名義で」
「なるほどねぇ。土地なんかだったらややこしい手続きもあるだろうし、そう簡単にあの女狐の手にいきわたることないねぇ」
二人の会話を聞いて、扉に置いた手を私は思わず引っ込めた。
財産なんて狙ってるつもりなんてないわよ。
そんなつもりで蒼介と結婚したわけじゃないわよ。
喉まで出かかった言葉を慌てて飲み込む。
誰が信じてくれるのだろう。
お義姉さんだって表面的には私に良くしてくださるけど、本当のところはどうなのだろう。
だって私たちは夫婦は、誰から見てもやっぱり不釣合いで――――
お金じゃなく
立場でもない。
彼のあの素朴な愛が好きだと言ったところで、
一体
誰が信じてくれるのだろう。
私は誰の隣に居れば釣り合いが取れるのだろう―――



