私には正直、一体蒼介が何に謝っているのか分からなかった。
あの義母の態度に対する贖罪なのか。
そんな風には思えなかった……
じゃ、何に―――?
謝らなければいけないのは私の方なのに。
私が先に蒼介を裏切ったって言うのに……
彼はまるで神に赦しを請うかのように、
まるで大罪を犯した罪びとのように―――懺悔するように
私に視線を向けていた。
蒼介が落ち着いた頃を見計らって、もう一度義母の病室を覗いてみることにした。
彼は一度トイレに行くと言って、病室の手前にあるお手洗いに入っていったので、私は先に病室に向かうことにした。
個室の入り口は僅かに扉が開いていて、そこから義母と姉の声がひそひそと聞こえてきた。
「あの嫁は私の財産を狙ってるんだよ!」
義母のヒステリックな声が聞こえて、私は思わず額に手をついた。
「そんな…狙うだなんて。紫利さんはそんなつもりじゃないですよ」
と義姉が困ったような、それでいて宥めるかのように義母に答えている。
「そうに決まってるよ。じゃなきゃ蒼介に何であんな若くて華々しい嫁がくるんだい。不釣合いだよ。
それに夜の仕事をしてたってこともあたしゃ気に入らないね。蒼介も蒼介だよ。いかがわしい場所に出入りして。
騙されてるんだよ、あの子は」
いかがわしい…ってあのお店はお酒を飲んで楽しく語らう場所よ。
偏見もいいところだわ。
でも
不釣合い―――……
騙されてる?



