きっと義母も、そして義姉も同じ思いだったのだろう。
二人とも驚いたように目を開いて、蒼介を注目している。
「紫利は本当に母さんが心配で飛んできてくれたんだ!それなのに、そんな口利いて、彼女が傷つくとは思わないのか!!」
地面をも揺らすような…いえ、実際揺れてなんかいないけれど、その声にははっきりと怒気が含まれていたし、迫力もあった。
普段穏やか彼がはっきりと怒ったところを見るのははじめてのことで―――
その迫力は啓人が怒ったときの無表情とはまた違ったものがあった。
「蒼介……」
お義母さんが困ったように眉を寄せ、息子からの叱咤にしょんぼりと頭を項垂れた。
お義姉さんもどうすればいいのか分からないように、二人の間に視線をいったりきたりさせ、おろおろと手をふら付かせている。
「蒼ちゃん、いいのよ…私たちの挨拶みたいなものだから…」
私は蒼介の細い肩に手を置いて、蒼介を宥めるように言い置くと、彼は荒々しく肩で息をしていた。
彼が呼吸するたびにその肩が大きく上下して、激しく荒立った感情が手のひらから伝わってきた。
「すみません。ちょっと蒼介さん興奮してるみたいですので、一旦外に出てきます」
私は義母と義姉に小さく頭を下げると、
「ええ、こっちは私が看てますから、どうぞごゆっくりと」と義姉がおっとりと、でもどこか心配そうに返してきた。
義母は蒼介に怒鳴られたのが相当ショックだったのか、顔を青くして唇を引き結び、私の方を見ようともせずに、ふいと顔を逸らす。
「蒼ちゃん、さ、行きましょう」
彼の腕を取って、何とか病室の外に促すと、彼はのろのろと歩き出した。



