予想もしなかった展開に、私は一瞬何か異国の言葉を聞いているように目をまばたいた。
「え……倒れたって…どうして…?だってあんなに元気だったじゃない」
「事情ははっきりとは知らないけれど、さっき急に倒れたらしいんだ。今、兄さんの奥さんが付き添ってる」
蒼介は顔を蒼白にして、口元を覆った。
足元から力が抜けていくのか、立っているのさえ辛そうだ。テーブルの椅子に手をついて、息を荒くしている。
私は立ち上がって、蒼介の肩に手をやり蒼介の顔を覗き込んだ。
「とにかく、病院に急ぎましょう。あなただって詳しいことは知らないんでしょう?」
私だって、急なことに驚いている。
だってあんなに元気だったお義母さんが……どうして…
そりゃいつも小煩い姑だけど、いざ…本当にそういう局面に立たされると、私は自分でも驚くほど動揺していた。
目の前が暗くなって歪みそうになるのを、何とか奮い立たせて、隣で青い顔をしている蒼介をしっかりと立たせた。
「しっかりなさい。あなた仮にも医者でしょう。とりあえず病院に行って確認するべきだわ。話はそれからよ」
私が強く声を出して、蒼介を叱咤すると蒼介はびくりと肩を揺らした。
うつろな目で私を見上げると、小さいながらしっかりと頷いた。
――――
――
お義母さんが運ばれたと言う総合病院は蒼介の勤めている大学病院とは違った。
そこまでの道のりを私の車で、私が運転しながら、助手席で蒼介が項垂れながらぽつりと漏らした。
「………ごめんね、こんなとき気が動転して…」
蒼介が弱々しく項垂れている様子を見て、私は眉を寄せた。
この人はこうゆう人だ。
私より年上なのに、元来真面目で、気が弱いし、いざとなったとき動揺して、機転が利かない。
でも
そんな蒼介の傍を―――
離れたくない。私が守ってあげたい。
心の底からそう思った。



