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それから三日ほどはこれと言って何もなかった。
相変わらず蒼介は研究に明け暮れていたし、啓人からも連絡はなし。
前は―――啓人の連絡を心待ちにしていた時期もあった。
彼に会いたくて恵比寿のバーに行ったこともあった。
連絡したくなくて、心を乱されたくなくて、携帯から目を逸らしたこともあった。
だけど今は、自分でも驚くほど色んなことを気にかけてはいない。
心穏やかだったといってもいい。
一方、アキヨが啓人の関係を蒼介にバラすと言っていたけれど、それがいつなのか皆目検討もつかず。
だけどビクビクしてるって言うよりも、私の中で妙な覚悟が出来ていた。
不倫がバレて、離婚を突き立てられようと、私は素直にそれに従うつもりでいる。
二人の間に子供が居なかったことも幸いだ。
ただ、慰謝料なんかを請求された場合は、そこからまた考えが変わる。
当然のことだろうし、払うつもりでもいる。
また―――…マダム・バタフライで雇ってもらおうかしら。
いえ、そんな図々しいこともできないわね。
第一体裁が悪すぎる。ママが雇ってくれるとは思えない。
そんなある平日の昼下がり、ぼんやりと求人雑誌を眺めていると、前触れもなく蒼介が帰って来た。
正直驚いた。帰って来る予定ではなかったし、第一時間が早すぎる。
また着替えでも取りに帰ったのかしら。
なんて思っていたけれど、蒼介の様子はただ事ではなかった。
酷く慌てたように血相を変えて私の元に来た。
とうとうこの日が来たか―――……
そう覚悟を決めたが、
「母さんが倒れた。今、病院に運ばれて緊急入院をすることになった」



