前触れもなく萌羽が私を引き寄せたかと思うと、彼女は私の体を抱きしめてきた。
「私は姉さんが好き。誰にも渡したくない!」
震える声で、だけど抱きしめる力はかなりの力だった。
驚いて目をみはった私は、そんな萌羽の行動に戸惑うしかなかった。
「研究に明け暮れて、姉さんをほったらかしにして寂しい思いばかりさせてる、あの旦那なんて大嫌い!
姉さんの気持ちを良い様に翻弄して、弄んでるあのジュニアも大嫌い!
嫌い、嫌い!大嫌いっ!!!」
私を抱きしめる腕に一層力を込めて、萌羽は叫ぶように言った。
その声が室内に響いて、彼女の感情と呼応しているようだった。
私は―――……どうすればいいのか分からなかった…
萌羽がこんな風に思っていたことをはじめて聞かされて、驚くしかできない。
「姉さんが離婚して、どこにも行くとこがなくなったら私のとこに来て。
私だったら姉さんを悲しませたりしない。姉さんだけしか見ない。
姉さんに寂しい思いをさせない」
萌羽は力強く言って、私から体を離した。
涙が浮かんだ萌羽の大きな目でじっと見つめられ、彼女は私の頬に顔を寄せると、まだ呆然としている私の頬に―――
そっと口付けをした。
優しい口付けだった。
今まで少なからず関係があったどんな男よりも―――
それは神聖なもののように思えた。



