色っぽいのに上品で、気が強そうなのにすごく優しい表情で……
と、萌羽は続けた。
「ああ…私―――こんな風になりたかった。あの一瞬図々しくもそう思っちゃって…
私、姉さんに憧れてマダム・バタフライの敷居をくぐったの。
考えもなしに無謀すぎるわよね」
そう―――…だったの……
私はゆっくりと萌羽が入店してきたときのことを思い出した。
「私が持っていた精一杯のお洒落をして、田舎娘だってことを必死に隠してた」と、萌羽は言う。
確かに―――モデルのようなスタイルの娘だった。
ブティックの店員だって聞いて、なるほど服のセンスも良かったし、化粧けがなかったから垢抜けなかったけれど、華やかな顔立ちをしていた彼女は―――
ドレスを新調するお金がないと、困っていたわね。
見習いの時期はお店から貸し出しするシステムだったけれど、そのときお店側に珍しく貸せるドレスが一着もなかった。
困り果てていたボーイと萌羽に声を掛けたのは私。
「姉さんが自分のドレス…お古だけどあげるわ、って優しく言ってくれて、私びっくりした。嬉しかった。
その後何の縁があったのか、私は姉さんのヘルプでよくテーブルにつくことになって、姉さんは仕事が分からない私に1から丁寧に……そしてすごく優しく教えてくれた。
他のホステスたちはみんな知らんフリ。自分のことで精一杯。…もしかしたら私が自分の地位を脅かすようなホステスになると思ったのかしらね。
姉さんだけよ。親切にしてくれたのは。」
まるで過去を慈しむように萌羽がゆったりと目を細め、私の手のひらをそっと包む。
だけどふいに目を開くと、萌羽は苦い表情を作った。
「私、男はもうこりごり。裏切られるし、近づいてくる男は体やお金目当てだったりするし。
もういやなの」
うんざりした様子で萌羽がため息をつき、
「だったらいっそこっちが利用してやろうって。若さと体を使ってお金持ちの男と結婚してやろうって」
だから啓人のことをあんな風に必死になって、がんばって―――
でも彼が私と関係があると知った時点で、萌羽はあっさりと身を引いた。



