Addict -中毒-



「それを知った両親がキレて、私を勘当したの。彼氏と二人でそこじゃないどこかに行ったけれど、当時まだ19だった彼とはすぐにうまく行かなくなった。


彼は次第に浮気するようになって、キャバクラなんかの店にも頻繁に出入りするようになった」


お決まりのパターンね。


まぁ歳若くして結婚した夫婦でうまく行く可能性だってあるけれど、その殆どがやはりまだ精神的に成長しきっていない未熟な男女だから、


普通の夫婦のようにはいかないだろう。


かと言って気持ちだけで繋がれる恋人同士にもなれない。


若いってことは、それだけで何でも出来る気がするけど―――だけど気持ちだけじゃどうにもならない。それなりのリスクも多いわけだ。


「私たちは喧嘩ばかりして、ある日彼は―――借金だけ残してどこかへ行っちゃった」


萌羽は遠い昔を懐かしむように…あるいは忌まわしい過去を思い出しているように、視線を宙に投げかけた。


「大変だったのね。苦労したでしょう」


私が萌羽の頬に手をやると、彼女はちょっとくすぐったそうに苦笑を漏らした。


今更―――私の言葉なんか、聞き入れてくれないだろう。


萌羽の背負った苦労や悲しみは私には計り知れないし、何を言っても気休めにしかならない。


しかも夫がありながら若い男に溺れている身だ―――


だけど萌羽は私の予想に反して、私の手を力強く握り返してきた。


僅かに目を伏せると、


「その後はその場所も離れて、彼の借金を返すため地方の安いキャバクラで働いた。何年掛かるか分からないけど、一生懸命。


だけど心労がたたって、子供は流産。


でも正直ほっとしたんだぁ。そのときの私に子供を産み育てるだけのお金も精神力もなかったから」


母親失格よね。と萌羽は自嘲じみて笑ったが、私は首をゆるゆると首に振った。


その動作に安心したのか、萌羽はちょっとだけ苦い笑いを浮かべて再び口を開いた。


「その数年後に、父親が病気で死んで―――私はお父さんの保険金を受け取ることになったの」


萌羽がゆっくりと目を開く。


その睫に涙の雫がくっついていた。