きっちり帯び締めも締めると、啓人はバスローブを羽織りベッドから抜け出てきた。
タバコに火を点けると、私の左手に自分の手を重ねてくる。
啓人が左手薬指の骨を撫でるようになぞったとき、
わたしの心臓がドキリと跳ねた。
「んで、旦那のことはどうするの?」
前触れもなく言われた言葉に、私の熱を持ったように熱かった心を瞬時に冷やした。
この男は―――
灼熱の愛の炎の中に引きずり込んだと思いきや、冷たい氷のような現実に
平気で突き落とす。
でも私がいけないのだ。私がこんな男に恋をしたから―――
私はため息を吐きながらも、乱暴に手を振り払った。
「あんたが心配するようなことじゃないわ。それともあんたは私に旦那と離婚して欲しいわけ?」
啓人はあっさりと私の手から自分の手を離すと、同じ手でタバコを挟み煙を吐き出した。
「そうじゃない。
ただ、あなたの気持ちはどこにあるのかな―――って思っただけ」
まるで他人事のように言って、私の耳元に口を寄せる。
啓人の香りに混じって、僅かなタバコに匂いが鼻の下をくぐり、不思議な大人の男の香りを間近で感じた。
情事の果てだというのに、彼の熱い息が耳裏をくすぐるたびに、腰から力が抜けていきそうになる。
そんなこと知ってか知らずか、啓人は
「怖い?」
と意地悪そうに一言、耳元で囁いた。



