啓人が僅かに身じろぎして、あたしの肩を一層強く抱き寄せる。
力強いのに、その仕草は強引とは思えなかった。
顔を上げると、啓人の穏やかな微笑みが私を待ち受けていた。
「不思議な人だな。大人の女で、気を引き締めてなきゃいつこっちがやり込められるかドキドキさせられるような挑発的な態度を取るかと思うと、
とことん少女みたいに可愛くなる」
大きな手のひらで私の頬をそっと撫でるとそのまま耳を伝い、解けた髪へと差し込まれる。
手馴れた仕草だけど、そうされることが嫌じゃない。
むしろずっと撫でていて欲しいとさえ思ってしまう。
くすぐったそうに目を細めて、啓人を見つめると彼も僅かに微笑んでいた。
―――だけどこの手は私一人のものじゃない。
このまま……
甘美な余韻に浸っていると、離れがたくなる。
どうしようもなく彼を束縛して、他の何事にも目を向けなくさせたくなる。
私に溺れて―――…一生私しか見なくなればいいのに…
なんて図々しいことを考えてしまう。
―――でもそんなこと彼は望んでない。
私は啓人の腕を取り、髪の間から引き抜くと半身を起き上がらせた。
啓人が枕に横たわったまま、不思議そうに私を見上げる。
「帰るわ」
短く言った言葉に、彼は引き止めの言葉を掛けなかった。
ただ
私が着物を着る姿を、興味深そうに眺めて、
「また帯を解きたくなる」なんて甘い言葉を耳元で囁かれたけれど、
私は笑って交わした。



