色とりどりの花火は―――まるで月夜に咲き誇る大輪の花。
月下美人に色はないけれど、たった一夜だけ―――咲き誇る花は…花火に似ている。
火薬の匂いがここまで漂ってきて、それが目を刺激した。
涙が出てきそうになって、それでも私は花火をじっと見つめた。
たった一夜だけ…それも数時間だけ咲く夜の花を。
あまりにも命の短いその花を―――
ああ、何て儚く、
何て美しいのかしら。
堪えきれず、私の目から涙が一滴零れ落ちた。
啓人は私の横顔を見つめていたけれど、それに対して何も言わなかった。
ただ優しく、目元の涙を拭ってくれただけ。
30年も生きていると、それなりに恋もしたし、
ついでに言うと安定した愛も手に入れたつもりでいた。
でも本当の意味での恋や愛なんて―――今まできっと知らなかったんだ。
知ったつもりでいただけ。
啓人に出逢うまでは―――
だけど彼と出逢ったことで知った恋は、何と脆く、何と悲しいものなのか―――



