Addict -中毒-



啓人の腕が私の腰から離れて、怪訝な目で私を見下ろしてくる。


「紫利さん?」


私はちょっと乱暴に彼をエレベーターの壁に押しやり、襟を掴むと噛み付くようなキスを私からした。


「んー」と啓人が吐息を漏らして、私の腰に腕を絡めてくる。


私は啓人の口から唇を離すと、背の高い彼を見上げた。そして彼の頬に手を置いて、指先で彼の唇をそっとなぞった。


「私は甘いキスをねだるような小娘でもないし、夢みる乙女でもないの。


あなたより五歳も年上だし、現実がどうかなんて分かりきってる。


だから私を夢中にさせるキスをして」


挑発的に口の端を吊り上げると、啓人は薄い唇の口角を色っぽく上げた。


私の手を包むその掌は優しさに溢れてたけど、それとは対照的に獣のように抱き寄せられ、今度は少し乱暴に私がエレベーターの壁に押しつけられる。


エレベーターの壁には落ち着いた色のフェルト地の壁紙が貼ってあったけれど、そこから金属の冷たさが背中に伝わり、ぞくりと鳥肌が浮かぶ。


すぐに啓人の顔が近づいてきて、その口が僅かに開いていた。


口の中でうごめく赤い舌に―――いつかのエルディアブロの色を連想させた。


魅惑的な色をした―――赤い悪魔。


言葉の通り彼の口付けは強引で、舌が乱暴に入ってくるとこっちの舌が根こそぎ引っこ抜かれるように強く吸われる。


「……ん」


角度をつけた顔が重なって、鼻も口も塞がる。息ができなくて苦しかったけれど、


こんなに乱暴で、こんなに息苦しくて、こんなにも―――溺れるほど甘い。


はじめてだった。今まで啓人としたキスなんて比じゃないぐらい、


私の背中をぞくりと何かが走り、甘い痺れが脳内を満たす。


それはエレベーターの金属の感触ではなく、恋の疼き。




私も彼の頬に両手をやって、彼を強引に引き寄せると、私たちは貪るようにキスを繰り返した。