まるで仲のいい友達同士で悪戯をして、母親の手から逃れるように私たちは笑い合いながら走った。
途中―――村木さんの姿が視界の端にちらりと映り、足を止めようとしたが
「紫利さん?」と啓人が急かす様にあたしの手を引いた。啓人は村木さんに気付いていないみたい。
「……え、ええ」
手を引かれるまま、私は再び前を向いた。
視界の端に写った村木さんの顔には、ちょっとびっくりしているものの、悪戯を見守る大人のような……
あるいは共犯者のような―――
そんな笑顔を湛えて、すぐに顔を逸らした。
あたしもちょっと微笑みを浮かべると、再び足を踏み出した。
―――エレベーターの中で夢中でキスを繰り返す。
きつく抱きしめ合い、互いの温度や香りも一体化するようなとろけるような口付け。
デジャヴ……
いつかの夜を思い出す。
それは日付にしてたった一週間足らずという時間だった。日めくりカレンダーをめくるようにあっけなく過ぎた日々だったけれど、
同時に、永遠のように永い時間にも思えた。
永遠に啓人のことを断ち切ろうと思ってから一週間。
たったの一週間なのに、彼の口付けが懐かしくて、でも思い出にするには惜しくて…
私はこの一週間、本当はこうやって彼がキスをしてくれるのをずっと待ち望んでいたのだ。
啓人が私の腰に腕を回し、強引に私を引き寄せてきた。
彼の香りが一段と近くに感じて―――
私は彼を乱暴に押しやった。



