私の隣で啓人が、何が可笑しいのか喉の奥でくつくつ笑ってアキヨを眺めていた。
「サイテーな女」
だけど放たれた言葉は刃よりも鋭くて、冷たいもの。
―――いけないのは私。
道徳に反しているのは私。
だけどこの気持ちはもう、誰にも止められない。
私は決めたの。
番号を変えて、アドレスを変えて―――まるで断ち切るかのように彼の存在を消し去ったのに、
再び会えたら、少しだけ運命を信じてみようと―――
私の中で大きな美しい花びらの月下美人がゆっくりと咲き、
まるで恋の中毒のように私を虜にする。
たとえそれがたった一夜の儚くて短い夢であったとしても、私は後悔しない。
はじめて会ったときから、私は彼の視線に捉われ、
まるで溺れるように彼を求めていた。
その彼が今は手が届く場所に居る。
―――蒼介に知られたら知られたときだ。
何もかも捨てて、この若い男に追いすがる―――
そんなみっともないことはしない。
だけど、蒼介に離婚を申し付けられたらそれには素直に従うつもりだ。
たとえこの恋がどれだけ短くても、どれだけむくわれないものでも、どれだけの代償を払ってでも
この一瞬を―――手放したくない。
たとえ一瞬だけでも、彼の母親に面影を重ねられても―――
啓人が私を選んでくれた。
それだけで充分。
それだけで…永遠に、私の中で美しい思い出となっていつまでも残る。
あの瓶の中でゆらめく月下美人のように―――
形を変えず、美しいまま―――



