アキヨの白い頬が、見る見る間に赤く染まっていく。
「あ、あたしじゃない!あのワインはあたしじゃないもん!」まるで子供の言い訳のような口調でアキヨがスカートの裾を握った。
銀座の一流高級クラブのホステスが聞いて呆れるわ。
こんなことでうまく切り返しもできないようじゃ、アキヨもまだまだね。
啓人は呆れ返ったように目を細めて、意地悪く口の端を吊り上げている。
「誰もワインのことなんて言ってないけど?」
その言葉にアキヨが目を開いて、慌てて口元を両手で覆った。
バカな子……
私は何も返さずに前を向き直った。
「行きましょ」今度は私が啓人を促して手を引っ張ると、
「言いつけてやるから!!」とアキヨの叫び声が後を追いかけてきた。
呆れたように振り返ると、啓人もちょっと不機嫌そうに表情を歪ませていた。
怒っている…と言うよりも、その顔は呆れているものに近かった。
「言いつけてやる!姉さんの旦那さんに、姉さんは不倫してますって!言いつけてやる!」
アキヨが怒鳴り声を上げて私を指差した。
「言えば?別にどうなったって構いやしないわよ。
私だって考えなしで行動してるわけじゃない。それなりの覚悟ってものができてる。
でも、あんたも地に堕ちたもんねぇ。そんなことで気が晴れるとでも思ってるの?
それで銀座のホステス名乗ってるなんて、私が恥ずかしいぐらいよ」
冷めた目でアキヨを見返し、はっきりと言い切ると、
アキヨは目を開いてその場で固まった。



