「どうせパーティーはこのままお開きだろ?紫利さんも、会場には戻らない?」
突然に聞かれて、私は言葉もなく小さく頷いた。
「そ。じゃぁ俺とふけない?」
そう言って腕を曲げながらちょっと上に持ち上げる。
口調は悪戯っ子そのもの、無邪気なものだったのに、立ち振る舞いはまるで英国紳士が女性をエスコートするかのような、スマートな仕草。
そのアンバランスな色けとあどけなさが、またも強烈に私の気持ちを揺るがせる。
迷う暇もなく、私はほんのちょっとだけ手を上げた。
「ふけるって、どうするつもりなのよ」
アヤコさんの厳しい声が聞こえて、はっとなり私の手がその場で止まった。
「そうよ。これ以上姉さんを振り回すのはやめてちょうだい」
萌羽も視線を険しくさせて、啓人を睨む。
啓人は二人の視線をもろともせずにいとも簡単に軽く受け流すと、
片方の眉を器用に吊り上げて、僅かに微笑んだ。
色の違う二つの目がまっすぐに私を捉え、強い視線が私の気持ちをもさらっていく。
「幸せなんて後付だ。きっかけなんて一歩踏み込めば、その後はどうとでもなる。
紫利さん、今だけは俺を選んで―――?
この瞬間だけは―――」
あなたを幸せにできるのは、俺だけだ。
そう物語って、自信に満ち溢れた視線に力強いその言葉に、止めようのない感情が溢れ出す。
私は啓人の腕をそっととっていた。



