アヤコさんの声は事務的なものではなく、本当に私を心配する気配を滲ませていた。
「いえ…こちらこそ、マダム・バタフライの者がご迷惑をお掛けいたしまして」慌てて頭を下げると、その隣で萌羽も頭を下げた。
「いいえ。いけないのはこの男!」
アヤコさんは啓人の胸座を掴みあげると、キっと睨み挙げた。
ぎょっとして目を剥いていると、さらに彼女は
「この絶倫野郎!あんたのせいでパーティーはむちゃくちゃよ!!」と怒鳴った。
ぜ…絶倫野郎……
綺麗な顔に似合わず、随分大胆な発言にあたしと萌羽は目を丸めて固まるしかなかった。
「それにこんな美人で、見るからに常識人の…しかも人妻に手を出すなんて!考えられない!!」
啓人は両手を軽く挙げて、
「美人だから気に入ったんだ」としれっと言う。
呆れてものも言えない…とは、このことだ。
最早返す言葉もない、と言う感じでアヤコさんは額を覆った。
一方の啓人は、こんなやり取りに慣れているのか、マイペースに腕時計に目を落としている。
「午前0時まで、あと三時間…かぁ」
ぼんやりと零して、おもむろに顔を上げた。
まだ驚きに目をまばたかせている私とばっちり視線が合うと、出し抜けに啓人が柔らかく微笑んだ。
目尻に皺を作り、薄い…相変わらず色っぽい口元に淡い笑みを浮かべている。
私が好きな……
セクシーな笑顔。
それはベッドに誘われているように誘惑的で、愛を囁かれているように魅惑的な
笑顔だった。



