萌羽の悲痛とも言える声がお手洗いに響いて、啓人に跳ね返ったように思えた。
啓人はちょっとだけ眉を寄せただけで、萌羽に何も反論はしなかった。
ただあのセクシーな唇が今はきゅっと結ばれているだけ。
「萌羽、ちょっと、落ち着いて」
私は慌てて萌羽の肩に手を置いた。
萌羽の肩は細かく震えていた。
下唇を噛んで、大きな目には涙の粒がたまっている。
「……そりゃあたしがけしかけたところもあるけど、姉さんに近づくなら姉さんを幸せにするぐらいの責任持ちなさいよ!」
啓人は今にも泣き出しそうな萌羽を見て、そして私に視線を移した。
「幸せじゃないの?」
彼の言葉に私は何も答えられずに居た。
幸せ―――
な筈ないじゃない。
こんな未来のない恋に―――どっぷりはまってしまった今……
危険で悲しい恋の荒波に逆らって、
啓人に恋して―――全ての幸せを放棄したも同じ
それでも私は…………



