私はちょっと吐息をついてシャンパンを一口飲むと、
「何なの、あんたは。私と彼が何を喋ってようとあんたには関係ないでしょう」
と、ちょっと啓人を睨みあげた。
いくら気に食わないからって、あからさまに敵対視することないじゃない。
ちょっとたじろいだ様子で啓人がまばたきをして、不思議そうに覗き込んでくる。
「機嫌悪そうだね。何かあった?」
「別に……何も…」
そう言って私は会長と談笑中のアヤコさんに目を向けた。
村木さんはアヤコさんと啓人が恋人同士じゃないと言ったけれど、本当のところはどうなのかしら?
会社の人に黙っている、もしくは関係がある雰囲気を見せないようにしているだけじゃないかしら。そんな風に考えてしまう私。
相当参ってるわ。
昔は、そんなつまらない嫉妬や、疑惑を抱かなかった。
男の言葉をストレートに信じる純粋な娘ではなかったけれど、何が本音で何が嘘なのかは大抵見破れた。
だけど啓人は―――……?
彼だけはどんなに目を凝らしても無理。
何もかも不透明で、掴めない存在。だけど引き寄せる力は強大で、いつしか私は彼の虜になっていた。
歳も取ったし、結婚して安泰した生活を送っている。それなのに今になってこんな激しい恋心に溺れるなんて―――
思いも寄らなかった。



