一週間前―――
ちょうどあの台風のときだ。あのとき啓人は酷く疲れていた。落ち込んでもいた。
村木さんが言う億の契約を取り逃がしたから―――?
「随分落ち込んで、元気がなかったですけどね。どうやら立ち直ったようだ。立ち直りだけは早いって言うか、妙に楽天家でもある。
羨ましい限りですけどね。でもそうじゃないと今後この会社を動かしていくには恐ろしいほどの精神力と体力が必要ですからね。
小さなことでくよくよしていられては困る」
億の契約を小さなことと言い切った村木さんの言葉はそっけなく感じた。
けれど村木さんは眩しそうに啓人を見ている。
そこに意味も無い敵視はなく、啓人の放つ輝きに村木さん自身が羨望の眼差しを向けているようだった。
彼は―――啓人を次の後継者として認めているのだ。
ただ、それが態度に出ていないだけ。
いいえ、変な媚を売らずに、自分の思うがままストレート過ぎるほどの情熱で彼は啓人と向き合っている。
「はは。すみません、こんな立ち入った話をしてしまって。でも何だかあなたは話しやすくて」
と村木さんは照れくさそうに笑った。
「きっと私が会社とは無関係な人間だからですわ。それに私の本業はホステスです。お客様のお話を伺うのが仕事ですから」
「なるほど。少しすっきりしましたよ。胸のつかえが取れたようだ」
村木さんは軽やかに笑った。
今は敵対しているけれど―――彼らが手を組んでお互いを助け合う存在になったら―――
きっと素晴らしい仕事ができるに違いない。
啓人もまだ若いからそんなことに気付かないけれど、いずれ分かるだろう。



