Addict -中毒-



「え!?じゃぁこないだ恵比寿のホテルで一晩……」


萌羽が小声で…それでも驚きを隠せないのか目を開いてあたしたち二人を交互に見やった。


「そんなことまで話してたの?紫利さんにとってあの夜は忘れらない夜だったわけだ」


にやりと笑って、啓人は自分のシャンパングラスを私に寄越した。


すぐ近くに居るウェイターのトレーから、グラスを二つ取ると、萌羽に一つ渡して、そしてもう一つの方に口を付ける。


「萌羽さんに口止め料。安いけど」


その笑顔に萌羽もノックダウン。


ほんの少しだけ頬を染めると、大人しく口を付けた。


「ちょっと。萌羽に手を出すのはやめてちょうだい。この子は私と違って純粋なんだから。それに忘れられない夜だから話したんじゃなくて、単なるアリバイ工作よ」


ぞんざいに言って、私は余裕の表情の啓人を睨み上げた。


啓人は心外そうに苦笑いして、


「俺だって誰かれ構わずってわけじゃないぜ?」と意味深に口の端を曲げた。


そして私の肩をさりげなく抱くと、萌羽に笑いかける。


「萌羽さん、紫利さんちょっと借りるね」


「え?はい……」


呆然としている萌羽にちょっとウィンクを投げかけ、啓人は私をバルコニーへ連れて行った。


バルコニーに続くガラスの扉は締め切ってあったけれど、いつでも出入りできるよう鍵は開け放たれている。


お洒落なデザインの丸いテーブルとセットのチェアがあり、テーブルの上にはアンティーク風のランプが乗っていて、明かりを灯してある。


すっかり暗くなった瑠璃色の空に、そのオレンジ色の光がぼんやりと浮かび上がり、


ロマンチックな雰囲気をかもし出していた。