私の質問に神流会長はちょっと表情を歪めて微苦笑をもらした。
「あのバカ息子は……」と小さくため息をつく。
「今日は不参加ですの?萌羽から素敵な方だと伺いました。お会いできないのが残念ですわ」
と、半分お世辞半分本気の口調で私は返した。
「一応参加の予定だが、まだ来ておらんようです。どうもこうゆうところは苦手みたいで」
そう聞き終わると同時に、会長の元に若い女性が近づいていた。
黒くて艶やかな髪を上品にアップしてあって、深いグリーン色のカクテルドレスに身を包んでいる。
美人だった。
マダム・バタフライのホステスだろうか、と一瞬思ったが身に纏う雰囲気から彼女がホステスというよりもキャリア・ウーマンと言う言葉の方がしっくりくることに気付いた。
「失礼します。会長…」彼女は笑顔を浮かべながらもちらりと私の方を伺った。
しっとりと落ち着いた声。
「ああ、綾子君。すみません、ちょっと失礼」
会長は軽く手を上げて、あたしに会釈をすると彼女の方に向き直った。
女性と会長は何やら深刻な顔でひそひそと喋っている。
会長の秘書なのだろうか―――
だけど
“アヤコ”
その名前に私はドキリと心臓を跳ね上げた。



