慌てて周りを見渡すと、丁度廊下の角を曲がっていく若い男二人組みが目に入った。
一瞬だったし、後ろ姿だったから啓人かどうか分からない。
「待っ……」慌てて駆け出そうとした私の背後から、
「姉さん?」と萌羽の声が追いかけてくる。
男たちはすぐに角を曲がっていって、私の視界から完全に消えた。
諦めるように足を止め、残り香を確かめるように息を吸い込んだ。
啓人―――………?何故こんなところに……?
疑問に思ったけれど、そもそも彼がこんな場所に居る筈がないのだ。
あの香りは―――誰か他の男のもの。
そう納得せざるを得なかった。
だけどその廊下の先を見て―――
私は息を呑んだ。
それはさっき私が夢で見た廊下と―――酷似していたから。



