最初萌羽は何のことを言っているのか分からないと言った様子で首を捻ったが、それでも元来が頭の回転の速い子だ。
「ああ!そんな感じ。みんな玉の輿を狙ってるものね」
と、どこか他人事のように言う。
「みんな考えは同じだものね。アキヨなんて今度のパーティーのためにドレスを新調したぐらいなんだから。
オーダメーメイドで100万以上するドレスらしいわよ?」
と、またもアキヨの話が始まった。
よほど気に入らないようだ。もしかしたらお店で相当な嫌がらせにあったのかもしれない。
私は萌羽の話を苦笑しながらも、それでも面白そうに耳を傾けた。
「新調したドレスをバックヤードで見せびらかしてたんだけど、ピンクのひらひら!わたしを見るとあの子あからさまに勝ち誇った顔して、
『萌羽姉さんにはこんなドレス着れないでしょうね~』なんて言ってきたのよ。
若さを売りにするつもり!まぁ確かにあの子は若いけど、わたしはあの子にない大人の色気で迫ってみるつもり」
萌羽の意気込みを「はい、はい」と笑いながら返した。
「でも、大人の色気って言うのなら……」
言いかけて、彼女はちらりと私を見る。
「なぁに?」と話半分で聞いていた私がのんびりと返すと、萌羽はゆっくりとまばたきをして真剣な視線を向けてきた。
「あたしもアキヨも月香姉さんにはやっぱり適わないと思う。
ううん。大人の色気ってだけじゃない。
姉さんは、何ていうか……
そこにいるだけで光り輝くような―――そんな華があって、綺麗で
色っぽいもの」



