ヒドイオトコ……
「俺に恋や愛を語るな。俺に多くを求めるな。それができなきゃ
お前なんて要らない」
前言撤回。
「最っ低!!」
女は叫ぶと同時にテーブルに置いたミネラルウォーターのグラスを引っつかみ、そのグラスの中身を彼の頭にぶちまけた。
同感ね。
私もそう思うわ。
そんな男、早く切って正解ね。
女は去り際まで何か彼を罵倒する言葉を喚いていたが、最後は泣きながら走り去って店を出て行った。
「お客様。大丈夫ですか?」
バーテンがちょっと苦笑いをしてタオルを彼に手渡した。
「ありがとね。ユウくん♪」
彼は親しげにバーテンに笑いかけ、そのタオルを受け取った。
さっきの恐ろしいまでの無表情はすっかりなりを潜めている。
用意がいいこと。
カクテルの入ったグラスをさりげなくお冷に変えたのもユウくんと呼ばれたバーテンの仕業に違いない。
呆れた様子で私が唖然としていると、その彼とばっちり目が合った。



